小学校受験・合格する子ってどんな子?

相談会MOVIEウェビナーレポート

1979年の発足以来、幼稚園・小学校受験を目指すお子様とご両親を応援し、その実績から大きな信頼を得ている「富士チャイルドアカデミー」。校長の前(まえ)先生より「小学校受験合格する子ってどんな子?」についてお話いただいたウェビナーのアーカイブ記事です。

私立小受験で一番大切なこと

私立小学校受験で一番大切なことは何だと思いますか?一番は経済力?確かにその通りです。先立つものがなければ小学校受験はできません。縁故関係も重要なのでは?と思われる方も多いようですが、小学校受験はクリアなものです。特に縁故関係などなくても実力があれば合格はいただけます。

では実力とは何でしょうか?どんな子が合格できるのか?

小学校受験で一番大切なことは、人の話が聞けることです。人の話を最後まで黙って言葉の意味を理解しながら聞けるかどうか。人の話を聞きながら、何が求められているのかを判断しながら聞けるかどうか。これに尽きます。

小学校受験はすべて口頭もしくは音声

小学校受験の具体的な内容についてお話しさせていただきます。

試験は全て口頭またはCDの音声で問題が出題されます。耳で問題文を聞いて、それに解答する試験ですから、人の話を聞けることが入試の合否に直結してきます。入試は大きく分けて、ペーパー・個別口頭試問・運動指示・絵画制作・行動観察があります。そして多くの私立小学校で面接が行われています。その全てが人の話を聞いて、その質問や指示を理解し、筆記用具または、手先や体全体を使って解答することになります。

つまり、人の話を理解しながら、最後まで黙って聞けるかどうか。これが合否を分けることになります。幼児教室では日々この人の話を聞く、つまり話を聞き取るという練習を行っています。

聞く力・話す力の低下に懸念

マスク生活で子ども達の発音に異変

2023年3月13日から屋外でのマスク不要となることは、お子様の言語獲得のためにはとてもありありがたいことだと思っています。今の年長さんは言葉を覚え始める2,3歳の頃から保育園・幼稚園時代全てでマスクの生活を強いられてきました。言語習得時期のマスク生活がお子様の言語生活、コミュニケーション能力にどのような影響が出てくるのか、とても心配していました。

コロナ以前にも子どもたちが柔らかいものばかり食べている食生活の影響で、あごや舌の発達不足で発音が不明確なケースが非常に多くなってきていました。ひらがなが読めない幼児特有の発音や順番の誤り、例えばライオンをライヨンと言ったり、反対にクレヨンをクレオンと言ったり、エレベーターがベータになるなんていうのは今までも定番でした。

ところが、今までになく子どもたちの発音がおかしくなってきているのを感じます。ヤドカリ・ひな祭り・ラクダ・ネズミなどがはっきりしないのです。マスクのせいで自身の口の動きそのものが悪くなっているための間違いなのか、相手の口元が見えない影響なのか。またその両方なのか、今まであまり聞いたことがないような発音の誤りを多く耳にします。

詩人の谷川俊太郎さんも、若手教師から「今の子どもたちに最も大事な国語の力は何か?」とい質問され「朝、家を出てから学校に着くまでにあったこと、見たことをきちんと言葉で伝えられればいいし、書くのはその後でいいでしょう」(朝日新聞の2023年1月15日「折々のことば」の記事参照)と記されています。伝える言葉の大切さに気付かされ、本当に背筋が伸びる思いでした。

話す機会が減っている

メールやLINEの普及も子供の語彙不足に無関係ではないと思います。2,3歳児クラスの保護者に「2歳になってスマホやiPadをきっぱりやめさせました」と言われて、驚きました。今ではもう2歳でスマホやiPad漬けになっているということでしょうか。大人社会でも、メールやLINEの普及で、直接相手に会って、または電話で話して用件を伝える機会は大幅に減りました。

子どもの社会では、「それ貸して」「それなあに」「どこで見つけたの」「やめて」など必要な言葉を言わなければ、お互いに仲良く遊ぶことはできません。大人は子どもに、相手に伝えるための言葉をたくさん教えていかなければなりません。

子どもに通じないことば

「食事の前には何てご挨拶をしますか?」と子どもたちに質問すると、答えが返ってきません。「食事」がわからないのです。「ご飯を食べる前になんて挨拶をしますか?」と言えば、100%の子が答えられます。「朝食」「昼食」「夕食」の意味がわかりません。いつも、朝ご飯・昼ご飯・夜ご飯、という言葉だけを保護者が使っていると、「食事」という言葉を知りません。夕食・夕飯・晩御飯・夜ご飯、全て同じことを指しているということを教える必要があります。

最近は、「これはお幾らですか?」と言って買い物をする場面が減ってきています。コロナ禍で非接触型の支払いが推奨されていますから、家から買い物に出て、一言も言葉を発することなく「ピッ」と精算を済ませて帰ってくることができる昨今です。それどころか、家にいながらにして、Amazonでポチっと押して商品を頼めば、翌日には商品が届くような便利な世の中になりました。

しっかりと口元を見せながら口を動かしてはっきりと喋るようにさせなければいけないと思っています。ご家庭では保護者の方がしっかりと口元を見せながらはっきりと話すことを伝えていただきたいと思います。 また、英語の保育園や幼稚園に通われているお子さんは、特にご家庭では日本語の語彙を増やすこと、発音を確かめること、正しい助詞や接続詞の使い方、単語の羅列ではなく文章で話すことを心がけて過ごすようにしてください。

富士チャイルドアカデミーの取り組み

富士チャイルドアカデミーでは、0歳から2歳までのお子様がお母様と一緒に過ごす「プレチャイクラブ」というクラスがあります。それから、3年保育受験を目指す「チャイルドクラブ」、2年保育受験を目指す「幼稚園受験コース」、そして、小学校受験を目指す年少児年中児のクラスがあります。

全てのコースにおいて、言葉の問題は重要です。対話が成り立つようにすることや人の話が聞ける子に育てることが、幼稚園受験、小学校受験で一番合格に近い子供に育てるということにつながります。保護者の方には、まず語彙を増やすことや話しかけること、そして人の話が聞けることを意識していただきたいと思います。

人の話を聞けるようになるために

子どもの話をよく聞くこと

聞く時は物分りの良い親にならなくていいです。子どもが「あれ」と言ったときは「あれじゃわからないわ」と言って、最後まできちんと言わせるようにしましょう。幼い言葉で一生懸命説明しようとしているときには、「どこで何を?」と言って、子どもが言葉を見つけるまで待ってじっくりと話を聞きましょう。

会話を大切にする

試験問題は何でもそうだと思いますが、質問に対して的確に回答ができるかどうかが評価の対象です。聞かれたことと違うことを、いくらいっぱいに答えても意味がありません。小学校入試の問題も同じです。その基本は、きちんとした対話が成り立つかどうかだと思います。日常会話の中で語彙を増やすと同時に、丁寧な対話を心がけましょう。

絵本の読み聞かせをする

絵本は言葉の宝庫です。語彙を獲得するためにも、絵本をたくさん読み聞かせるようにしましょう。ご両親様が小さい頃に読んで楽しかった本をぜひ読み聞かせてあげてください。その上で、時々「この言葉の意味はわかってる?」というふうに確認してみてください。「どこが一番好き?」と子どもの意見を聞いてみるのもいいと思います。絵本を介して親子の楽しいお喋りができるといいと思います。絵本に記してある対象年齢は目安にはなりますが、あまりとらわれないで良いと思います。

NHKのニュースを見る

NHKのアナウンサーの話し言葉はいわゆる共通語・標準語と呼ばれるものです。アクセントを含め、できるだけ多くの人が聞きやすく理解しやすいように研究され尽くしています。NHKのアナウンサーの言葉を聞いて、正しい発音や助詞の使い方を自然と身につけさせましょう。地方のニュースの中には幼児が興味を持てる季節の話題もあります。天気予報も順序立てた話し方を学ぶ良い材料です。

しつけと自立も大切

人が話をしているとき最後まで黙って話を聞くことは、いろいろな場面で我慢することができるという、しつけの問題でもあるのです。しつけがきちんとできていないと、同じことを繰り返し注意するために、子どもはスルーをすることを覚え、話を聞かない耳が育ってしまいます。

また、自立させることも大切です。依存心依頼心が強いと、今聞いておかなくても後でママがどうにかしてくれる、私は何も困らないと思っていて、ちゃんと聞こうとしません。聞いていなくて困ったという経験が不足しているのだと思います。自分のことは自分でさせる。自立した生活習慣は、人の話を聞く上でとても大切です。私は幼児期の様々な体験が、保護者の方の丁寧な言葉かけとともになされることが、人の話を聞ける子に育てる上で大切なポイントだと思います。

最後に、参加者からの質問にお答えいただきました。一部をご紹介します。

★Q.小学校受験に向いてるか不安です。
小学校受験については向き不向きではなく、まず“お子さんを6年間どのような環境で教育を受けさせたいか”という保護者の意思が先にあるべきだと思います。その上で、向いている幼児教室を見つけて受験準備をしていけば、お子さんのモチベーションも上がってきて、小学校受験に向けて力に変えていくことが可能なんじゃないかなと思います。

★受験塾に行かないと、受験は無理でしょうか?
私立小学校に関しては、やはり情報も含め、幼児教室に通われるのが良いと思います。難関校においては、幼児教室に通わずに受験をしても、合格の可能性は大変に低くなると思います。ただ、学芸大学附属世田谷小学校ならば、出題範囲が狭いので、日頃から自立していれば、合格の可能性が出てくると思います。国立でも筑波とお茶の水を受けるのであれば、受験の準備が必要というふうに思います。